ロバート・エンバーソンはカナダからキリスト教伝道のために日本に派遣された人で、この住宅は1904年に静岡市葵区西草深に建てられた彼の自宅です。その後、エンバーソンが帰国した後も宣教師や牧師の住居としての役割を果たすことになりました。建築から80年を経過したころ、老朽化を理由に解体の話が持ち上がりましたが、建物そのものが市へ寄贈され現在の場所(静岡市駿河区池田2864-52)に移築され、歴史的建造物として保存されることになりました。明治時代の洋館によく見られる下見板張りが良い雰囲気を醸し出していると同時に、写真ではわかりにくいですが屋根は瓦で、これも「和洋折衷」の一つの形だと言えるでしょう。現存する場所は、日本平動物園のすぐ近くにあるのですが、看板がないのでややわかりにくいかもしれません。日本平動物園の人に聞けばすぐ教えてもらえると思います。都会にある古い建造物は、老朽化を理由にすぐに解体とか、高層ビルを作って一部だけ張りぼてのよう残すという中途半端に保存されがちですが、このように移築することで建物の完全な保存が可能だというアイデアはもっと注目されてよいと思います。欲を言えば、せっかく残した建物ですから、うまく宣伝して観光資源として活用できれば言うことありません。